UIA大会でのシンポジウム、JIA報告!

【災害復興・グローカルデザインを考える】国際シンポジウム「危機を機会に!」
                                           連健夫(デザイン部会長)
9月27日東京国際フォーラムD1ホールにて100人を超す参加者の中で開催された。コーディネーター(筆者)からはグローカルデザインの3つの視点として①ヴァナキュラー性、②環境共生、③利用者参加が提示された。基調講演は長島孝一氏、グローカルアプローチが生まれた歴史的背景と共に、グローバルは強いが故にローカルが排除されないようにする必要があるとした。次にパネラーとして、新居千秋氏は住民参加のプロセスを経て完成した大船渡リアスホールが、避難所として使われた時に住民が既に身近な施設として意識していたこと、有機的形状が各家族の居場所を作っていたことを紹介した。韓国のチョー・ミンシックは上海万博での韓国パビリオンの設計を通して、マトリックスという考え方から生まれる多様な表現を紹介した。松原弘典氏はコンゴでの学校プロジェクトと共にグローカルについて3つの無い建築(最終形が無い、押し付け無い、精度が無い)を説明した。香港のツアン・トーマス氏は中国の作品づくりの経験を通して、地域とアートの関係性、アートが人を繋げることを話した。コメンテーターとして、哲学者で立教大学教授の内山節氏からは「近代の問題点は素人が排除されてきたことであり、復興デザインの中で、素人の力を取り入れていくことが重要である、専門家は素人と自然との関係性についての代弁者でなければならない」と指摘した。ディスカッションで浮き彫りになったのは、近代の敗北を前提としてグローカルデザインを捉えた場合、ローカルを重視するがために内向きになることになる恐れがある問題点である。ローカルを突き詰めるとグローバルに繋がることを視座に入れて活動することが大切であると議論された。

(撮影:石川智香子)